□「コスプレと著作権との関係」2021/02/01竹山宏明
【表1】1 「コスプレ」について、
2 「キャラクター」について
1 「コスプレ」について ・「コスプレ」は、「著作物であるアニメ、マンガ、ゲームソフト、映画などの登場人物、つまりキャラクターを複製または翻案してコスプレイヤーがメイクアップやヘアデザインをし、衣装を身に付けて二次的利用をする行為である。」(勁草書房・2017、[*1])と考えて良いように思います。 ・「著作物」には、「アニメ、マンガ、ゲームソフト、映画」が該当します。 2 「キャラクター」について ・つぎに、「キャラクター」は、その表現、すなわち「デザイン」が著作法で保護されます([*2])。 ・いわゆる「同人誌違法サイト事件」の知財高裁判決では、 「『キャラクターの複製』であると言うためには、キャラクターを特定するだけでは不十分であり、原著作物の漫画等においてそのキャラクターが描かれているコマ等、複製対象の著作物を明確に特定しなければならない。」 と判断されました([*3]、下線加入)。 ・また、同事件では、 「本件において複製が発生しているとすれば、それはキャラクターの容姿や服装等の基本的設定に関する部分である。」 と判断されました([*3]、下線加入)。 ・上記判決において、キャラクターの「容姿や服装等の基本的設定に関する部分」 は、 「主人公等の容姿や服装などの表現そのものにその本質的特徴があるというべきであって,」 と判断されました([*3]、下線加入)。 |
【表2】3 キャラクターの「本質的特徴」について
3 キャラクターの「本質的特徴」について ・一方、「どきまぎイマジネーション事件」の東京地裁判決では、 「本件ビデオには、女子高校生が登場し、そのパッケージには、右女子高校生の図柄が大きく描かれている。右図柄は、①僅かに尖った顎及び②大きな黒い瞳(瞳の下方部分に赤色のアクセントを施している。)を持ち、③前髪が短く、④後髪が背中にかかるほど長く、⑤赤い髪を黄色いヘアバンドで留め、⑥衿と胸当てに白い線が入り、⑦黄色いリボンを結び、⑧水色の制服を着た⑨女子高校生として描かれている。 本件ビデオに登場する女子高校生の図柄は、本件藤崎の図柄を対比すると、そのⓐ容貌、ⓑ髪型、ⓒ制服等において、その特徴は共通しているので、本件藤崎の図柄と実質的に同一のものであり、本件藤崎の図柄を複製ないし翻案したものと認められる。 したがって、被告が本件ビデオを制作した行為は、本件ゲームソフトにおける本件藤崎の図柄に係る原告の著作権を侵害する。」 と判断されました([*4]、下線、丸で囲んだ数字、アルファベット加入)。 ・本判決では、キャラクターの「ⓐ容貌、ⓑ髪型、ⓒ制服」の特徴(以下、「本質的特徴」という。)を、図柄同士で比較しています。 |
【表3】4 キャラクターと「コスプレ」との比較について
4 キャラクターの図柄と「コスプレ」との比較について ・「コスプレ」の場合に、上記「ⓐ容貌、ⓑ髪型」は「コスプレイヤー」に係わり、上記「ⓒ制服」は「コスプレ」の「衣装」に係わります。 ・このため、図柄同士の比較から、キャラクターの「図柄」と、「メイクアップ」や「ヘアデザイン」をし、「コスプレ」の衣装を身に着けた「コスプレイヤー」の特徴との比較に変わります。 ・すなわち、「コスプレ」の3Dの「衣装」を身に着けた「コスプレイヤー」の「コスプレ行為」が、「キャラクター」の2Dの「図柄」と実質的に同一と判断されます。 ・はたして、実質的に同一と判断される場合がどのくらいあるでしょうか。 |
【表4】5 キャラクターの衣装について、6 まとめ
5 キャラクターの衣装について ・キャラクターの「本質的特徴」は、「衣装」だけであり、キャラクターの「ⓐ容貌、ⓑ髪型」を除外して考えることができるでしょうか。 ・「衣装」を、キャラクターと切り離し、「衣装デザイン」として「単体」で「著作物」に該当する判断することが考えることができます。 ・このとき、「衣装デザイン」を、単に「純粋美術」(実用に供され,あるいは産業上の利用を目的とする表現物、広義の「応用美術」)の問題として割り切って考えるのは即断です。 ・「応用美術」である「衣装デザイン」については、「TRIPP・TRAPP事件」[*5]や、更には米国の判決につても検討する必要があるものと考えます。 6 まとめ ・「コスプレと著作権との関係」は、複雑な問題を含んでいるものと思います。 ・しかし、政府が一般化し、ルールを整備すると、国内においては有力な考えとして指示されるかもしれません。 ・果たして、良策なのでしょうか?、又、海外で歓迎されるのか、疑問に思います。 ・「コスプレ」の問題を、「著作権」の問題として解決するので無く、「不正競争」の問題として、ひとまず解決するのも一策と考えます。(以上) |
[*1]小倉秀夫「コスプレと著作権」(2021/01/20)
(当該ページのURL)
https://note.com/benli/n/n68a6d9941e9c
[*2]●Powered by WordPress/弁理士 前渋正治
キャラクターは著作物ではない、
という言葉を都合よく解釈するな。の巻
(当該ページのURL)
https://maeshibu.com/2020/11/11/charight/
[*3]令和2年10月6日知財高裁判決、令和2(ネ)10018
「同人誌違法サイト事件」、*全15頁
(当該ページのURL)
https://www.ip.courts.go.jp/app/files
/hanrei_jp/748/089748_hanrei.pdf
[*4]平成11年8月30日東京地裁判決、平成10(ワ)15575
「どきまぎイマジネーション事件」
(当該ページのURL)、*全4頁
https://www.courts.go.jp/app/files
/hanrei_jp/668/013668_hanrei.pdf
[*5]平成27年4月14日知財高裁判決、
平成26年(ネ)第10063号
「TRIPP TRAPP事件」、*全68頁
(当該ページのURL)
https://www.newpon.com/data/mat_pdf/copy/150414H.pdf
[*6]【米国判例メモ/著作権】弁護士 関 真也
コスチュームに施された図形・模様のデザインが
著作権によって保護されるか否か(分離可能性)
及び侵害の成否
Diamond Collection,
LLC v. Underwraps Costume Corporation
(E.D.N.Y. Jan. 22, 2019)
*2020/04/15 02:58
(当該ページのURL)
https://note.com/masayaseki/n/ndd4621dfde0c
<サイト内>
●2021年1月31日 (日)、【著作権】noteプレミアム/
小倉秀夫/コスプレと著作権(2021/01/20、02/01竹山公表)
●2021年1月24日 (日)、【著作権】ニッカンスポーツ/
コスプレ著作権ルール化へ えなこらから意見聴取
(2021/01/23、01/24竹山公表)
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(以上)