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2019年6月 8日 (土)

【特許】日本経済新聞「特許侵害の賠償金、減額認める事情明示 知財高裁」(その4<終>)

<目次>
 -知的財産高等裁判所「平成30(ネ)10063号」
  (令和元年(2019年)6月7日、侵害訴訟等控訴事件)の解説-
 (その1)1 新聞記事の紹介
      2 判決(本件全文及び要旨、原審である大阪地裁の判決)
 (その2)3 判決要旨
 (その3)4 論点1について(特許法102条2項の「利益の額」)
 (その4<終>)
      5 論点2について(特許法102条2項の「推定覆滅事由」)
      6 論点3について(特許法102条3項の「金銭の額」)

<本文>

5 論点2について(特許法102条2項の「推定覆滅事由」)
【表1】 *改行加入、レイアウト変更。

論点2:特許法102条2項の「推定覆滅事由」

【論点2についての判示事項】
 (1)特許法102条2項における推定の覆滅については、同条1項ただし書の事情と同様に、「侵害者が主張立証責任を負う」ものである点について判示されている。

 (2)上記推定の覆滅については、侵害者が得た利益と特許権者が受けた損害との相当因果関係を阻害する事情、例えば次の事情がなどが該当する点について判示されている。
  ①特許権者と侵害者の業務態様等に相違が存在すること(市場の非同一性)、
  ②市場における競合品の存在、
  ③侵害者の営業努力(ブランド力、宣伝広告)、
  ④侵害品の性能(機能、デザイン等特許発明以外の特徴)

【「控訴人らの主張する推定覆滅事由」に対する裁判所の判断】
 (1)控訴人らの主張する推定覆滅事由
 「本件において、控訴人らの主張する推定覆滅事由のうち、競合品の存在、控訴人らの営業努力、被告各製品が顕著に優れた効能を有すること、被告各製品が控訴人らのうちの1名の特許発明の実施品であることについては、いずれも、その事実が認められないか、それが侵害者の売上げに貢献しているといった事情が認められない。」
 (2)控訴人らが主張するその余の推定覆滅事由
 「控訴人らが主張するその余の推定覆滅事由は、被控訴人の受ける損害とは無関係であり、推定覆滅事由に当たらない。」

 <出典>知的財産高等裁判所「平成30(ネ)10063号」の「要旨」
6 論点3について(特許法102条3項の「金銭の額」)
【表2】 *改行加入、レイアウト変更。

論点3:特許法102条3項の「金銭の額」)

【論点2についての判示事項】
 (1)特許法102条3項による損害は、原則として、侵害品の売上高を基準とする点、及び実施に対し受けるべき料率(実施料率)を乗じて算定すべきである点の計2点について判示されている。
  【計算式】
 ・特許法102条3項による「損害」=「侵害品の売上高」×「実施料率」

 (2) 特許法102条3項による損害を算定する基礎となる実施に対し受けるべき料率(実施料率)は、次の諸事情を総合考慮して、合理的な料率を定めるべきである点について判示されている。
  ①当該特許発明の実際の実施許諾契約における実施料率や、それが明らかでない場合には業界における実施料の相場等も考慮に入れつつ、
  ②当該特許発明自体の価値すなわち特許発明の技術内容や重要性、他のものによる代替可能性、
  ③当該特許発明を当該製品に用いた場合の売上げ及び利益への貢献や侵害の態様、
  ④特許権者と侵害者との競業関係や特許権者の営業方針等訴訟に現れた諸事情
を総合考慮して、合理的な料率を定めるべきである。

 <出典>知的財産高等裁判所「平成30(ネ)10063号」の「要旨」
【表3】 *改行・下線加入、文字色・レイアウト変更。

【特許法102条3項の改正の経緯】
 特許法102条3項所定の「その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額」については、平成10年法律第51号による改正前は「その特許発明の実施に対し通常受けるべき金銭の額に相当する額」と定められていたところ、「通常受けるべき金銭の額」では侵害のし得になってしまうとして、同改正により「通常」の部分が削除された経緯がある。
 特許発明の実施許諾契約においては、技術的範囲への属否や当該特許が無効にされるべきものか否かが明らかではない段階で、被許諾者が最低保証額を支払い、当該特許が無効にされた場合であっても支払済みの実施料の返還を求めることができないなどさまざまな契約上の制約を受けるのが通常である状況の下で事前に実施料率が決定されるのに対し、技術的範囲に属し当該特許が無効にされるべきものとはいえないとして特許権侵害に当たるとされた場合には、侵害者が上記のような契約上の制約を負わない。
 そして、上記のような特許法改正の経緯に照らせば、同項に基づく損害の算定に当たっては、必ずしも当該特許権についての実施許諾契約における実施料率に基づかなければならない必然性はなく、特許権侵害をした者に対して事後的に定められるべき、実施に対し受けるべき料率は、むしろ、通常の実施料率に比べて自ずと高額になるであろうことを考慮すべきである。
【本件における「実施に対し受けるべき料率」】
 本件において、
①本件各特許の実際の実施許諾契約の実施料率は本件訴訟に現れていないところ、本件各特許の技術分野が属する分野の近年の統計上の平均的な実施料率が、国内企業のアンケート結果では5.3%で、司法決定では6.1%であること及び被控訴人の保有する同じ分野の特許の特許権侵害に関する解決金を売上高の10%とした事例があること、
②本件発明1-1及び本件発明2-1は相応の重要性を有し、代替技術があるものではないこと、
③本件発明1-1及び本件発明2-1の実施は被告各製品の売上げ及び利益に貢献するものといえること、
④被控訴人と控訴人らは競業関係にあることなど、本件訴訟に現れた事情を考慮すると、
特許権侵害をした者に対して事後的に定められるべき本件での実施に対し受けるべき料率は、10%を下回らないものと認めるのが相当である。

 <出典>知的財産高等裁判所「平成30(ネ)10063号」及びその「要旨」

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(以上)

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